【CLIP STUDIO】3D素材を利用してそれっぽい背景を描く方法
もうすぐコミックマーケット96の当落発表ですね。
コミケで新作を出す予定の我がサークルは「やばいこれ間に合わないよ!」「いや、まだ慌てる時間じゃない」「1ヶ月前には完成させたい」「無理じゃん」「そうだ、コミケに落ちれば締め切りが延びry」などと早くも連日浮足立っております。
しかもうちはゲームサークルなんで6月中にはゲーム本体を作り終えてデバッグに入らないとマズイんですが、本体の制作に追われてゲームの顔になるパッケージイラストがまだ出来上がっていないというおまけ付き。
それでも何とか見栄えのいいパケ絵を用意したい! という事で今日はクリップスタジオの特徴の一つである3D素材の使い方を記事にしたいと思います。
クリップスタジオにはデフォルトで背景や小物、トレス用の3Dモデルなどが入っており、それらを利用すると自分の画力以上の絵を簡単に描く事が出来るのです。
キャンバスに素材を読み込む
まず素材パレットから使いたい素材を選んでキャンバスに読み込みましょう。
素材パレットが表示されていない場合は画面上部のメニューからウィンドウ(W)→素材(M)→素材[3D]と進みます。
後は使いたい素材をキャンバスにドラッグ&ドロップすれば3Dデータが読み込まれます。
素材が表示されない場合
PCのスペックが足りなかったり、データが破損していたりすると素材が表示されない事があるようです。
私も最初、何をやっても素材が表示されなくて途方にくれました。
PCのスペックをどうにかする
3Dなので素材を使うにはそれなりのグラボがいります。
私のPCはゲーミングPCなのでスペックは問題ありませんでしたが、スペックが足りない場合はパーツを買い替える(ノートPCの場合はPC買い替え)か3D素材の使用を諦めましょう。
クリスタのバージョンを更新する
理由はわかりませんが、ググるとこれで直ったという書き込みがありました。
↓最新版へのアップデートはここから行けます↓
マンガ、イラスト制作ソフト CLIP STUDIO PAINT | アップデータ ダウンロード | CLIP STUDIO
……が、私はそれでもダメでした。
データの再構築・初期化
ググるとバージョンアップと同じくらい勧められるのがこのデータの再構築なんちゃらです。
やり方は、クリップスタジオ(※クリップスタジオペイントではなくアイコンクリックで起動時に立ち上がるほう)だけが立ち上がった状態で画面右上の歯車アイコン→メンテナンスメニュー(D)と進んで、
・素材データベースの再構築(R)
・素材フォルダの再構築(O)
を実行します。
……が、私はやっぱり駄目でした。
追加素材をダウンロードする
上記のメンテナンスメニューには追加素材の初期化(M)という項目があります。
これは名前の通り追加素材を全てダウンロードし直すのでかなり時間がかかります。
が、私はこれで解決しました。
読み込んだ3D素材を配置する
ドラッグ&ドロップで読み込んでみました。
しかしこれでは絵になりません。色々と調整してみます。
カメラの位置を変える
カメラの位置(見え方・視点)の操作は読み込んだ素材の上に表示されるアイコンをクリックし、マウスをドラッグする事で行えます。
このアイコンの左3つがカメラ操作です。
左から3個目のアイコンをクリックしてから画面上をマウスの左ボタンでドラッグすると、カメラが寄ったり引いたりします。
左から二個目のアイコンをクリックし上下左右にドラッグすると視点がその方向へ移動します。
一番左のアイコンをクリックしてドラッグスすると、アングルが変わります。
素材の位置を変える
カメラではなく素材を動かしたい時は右5つのアイコンをクリックします。
操作はカメラの操作同様マウスの左ボタンをドラックする事で行います。
という事で、色々並べてみました。
ちなみに、物や人をたくさん並べると配置中にうっかり縦方向に動かしてしまい、地面から浮いたり沈んだりさせてしまうことがあります。
そういう時はツールプロパティから『設置』ボタンを押すと素材を地面につかせる事が出来ます。
さて、使用しているCLIP STUDIOがPRO版の場合はこれでお終いです。
これを下絵にラフを描いていきましょう。
――が、EX版の場合はなんと、線画を抽出する機能があります。
線画を抽出する(EX版のみ)
EX版では画面上部のメニューからレイヤー(L)→レイヤーのLT変換 という機能が使用できます。
なんか色々と設定がありますが、左上のライン抽出の項目でベクターレイヤーを選んでOKしてください。
すると……
3D素材のレイヤーの上に新しいレイヤーが沢山生成されます。
線画として使うのは一番上の輪郭線のみなので、他は捨ててしまって構いません。
するとこのような線画が完成します。
しかし線画を拡大してみると線画カクカクしています。
これは線画の抽出が二値化された線でしか出来ない為です。
なので二値化された線にアンチエイリアスをかけます。
まずオブジェクトツール(画像左上の四角に矢印のアイコン)を選択し、次にツールプロパティで透明箇所の操作をクリックします。
すると操作内容の設定が出てきて画像のような状態になるので、『ドラッグで範囲指定して選択』と『オブジェクト』にチェックを入れます。
この状態でキャンバス上をドラッグすると、その範囲内の線が選択された状態になります。
↑線が選択された状態
線が選択された状態でツールプロパティ内のアンチエイリアスから好きな●を選びます。
これはアンチエイリアスの掛かり具合を指定するもので、押した瞬間に反映されるので線画を確認しながら選んで見て下さい。
着色する
作業お疲れ様です。
線画が完成すれば、あとはもう普段のお絵描きと同じです。
下塗りをして、
小物(これも3D素材を追加しました)を描き込んで、
更に描き込んで……全然完成が見えてこないんですが、まぁ、こんな感じでそれっぽく絵を描く事が出来ます。
という訳で、皆さんも3D素材を活用してみて下さい!
それでは無事にコミケに当選し、無事にゲームが完成したらコミケでお会いしましょう!
自主制作映画『リアル自宅警備員』の感想
突然ですがうちのサークル、今年の夏コミで新作を出します。
ジャンルは学園サスペンスもののノベルゲームで、かまいたち系の分岐方法でメインのサスペンスルートの他にホラーやオカルトルートが入っています。
つきましては広報を兼ねたOPムービーを絶賛制作中なのですが、動画制作は初めての事なので、ネットの力を借りつつどうすれば見栄えのいい動画になるか試行錯誤やっております。
そんな中、動画の編集方法について調べていると、面白いものを見つけました。
それがこの、自主制作映画『リアル自宅警備員』です。
とりあえず予告編を貼るので見てみてください。
ネタ先行かと思えばスケールのでかいシリアスな話のようでワクワクしませんか?
私はミリタリーもの好きなのでものすごくワクワクしました。
そしてなんと、本編もyoutubeで無料公開されています。
Q.するとどうなるか……?
A.社会人の貴重な作業時間が映画鑑賞に吸われました
というわけで、あ~面白かった! だけで終わらせるのも勿体ないので、リアル自宅警備員の感想を書きたいと思います。
作業やれとか言わない
作者紹介(主観)
リアル自宅警備員は紅葉葉(もみじば)さんという方によって約2年半かけて作られた自主制作映画です。
なんとこの紅葉葉さん、リアル自宅警備員では脚本・監督・撮影・役者・編集・作曲と実に多くのポジションをこなしています。
こんなに色々できるなんてもしや本職の方? と思いきや、仕事は映像とは関係ない仕事をしており、自主制作に関する知識は独学のようです。
私はゲーム畑の人間なので映像の事はわかりませんが、同人ゲームに例えるとプログラム・グラフィック・シナリオ・作曲・その他(ムービーや広報)を全部一人でやっているようなものですね。
いない事はないですが、かなりの少数派でしかも完成までこぎつけられる人はごく僅かです。なかなか出来るものじゃないですよ。
一体何が紅葉葉さんにそこまでさせるのか……?
作者さんのブログの過去記事を読んでいると、こんな事が書いてありました。
大雑把にまとめると「仕事だけで終わる生活はつまらないから」という事のようです。
仕事が終わると深夜2時から4時までひたすら制作作業、という生活を送っていて、もはや創作がライフワークになっています。
ブログでは他にも制作秘話やノウハウ、制作についての考えなど様々な事が書かれており(あとゲームなどに使える音楽素材の公開もしてます)映像制作に対して並々ならぬ熱意が感じられます。
そんな人が作った作品が面白くないはずがない! ということで、ネタバレに気を付けつつリアル警備員の感想を書いていきたいと思います。
ストーリー
この映画の主人公は引きこもりです。
しかし、この世界の引きこもりはただ部屋に籠っているだけでなく自宅を武装し要塞と化しています。
いつからそうなったのかは不明ですが、ある引きこもりが自宅に近づいた民間人を自宅の防衛システムで殺した事により、もともと引きこもりに対して批判的だった国民感情が悪化。
政府は引きこもり達を正式に自宅警備員と名称付けし、彼らを更生させるべく対自宅警備員専門の突撃部隊を送り込み制圧していきました。
そして、物語は主人公の家に突撃部隊がやってくる8日前から始まります。
主人公には通話アプリでやり取りをしている引きこもり仲間がいました。
お互い自宅突撃まであとわずか、という状況でその友人は家を出る(社会に出る)決断をします。
主人公は色々考えた末に出した結論ならば応援する、と言って送り出すのですが……そこである悲劇が起こりました。
これはネタバレになるので伏せますが、その事がきっかけで主人公は国に対し徹底抗戦を決意します。
そして自宅突撃当日。
かつてない程の壮絶な戦いが始まります。
映画の見どころ
この作品の見どころはなんと言ってもド派手な戦闘シーンだと思います。
突撃員達の突撃から戦車出動、戦闘機発進と戦闘が激化するにつれて個人制作とは思えない迫力のある映像が展開されます。
タイトルはネタっぽいのに内容はドシリアスで大真面目、というのがとても面白いです。
この主人公は元々才能があるのか怒りによって強化されているのか、戦車が来てもミサイルが飛んでも自宅を守り続けます。
その為、国は最終兵器とも言えるとんでもないものを出してくるのですが……これは見てのお楽しみです。
戦闘が激化するにつれて、「え、これ最後どうなるの!?」と物語に引き込まれる事間違いなしです。
感想
全体的にシリアスな作品なのですが、最後まで見るとちょっとだけ前向きな気持ちになれました。
戦闘が派手なのでついそっちにばかり目が行ってしまうのですが、主人公の心理描写というか心の移り変わりもよく描かれていて良かったです。
自宅突撃員との戦いの中で主人公は何を思うのか?
無料公開なので是非自分の目で確認してみてください。(本編は50分程です)
~本編~
主人公は戦いによって何を失い、何を得るのか――?
おまけ
作中の突撃シーン、大量の隊員が突撃していく様に「おぉ~」となったのですが、実は隊員の殆どが紅葉葉さん本人だそうです。
制作記事によると、編集で沢山いるように見せているんだそうな。
映像編集って面白いですね。
本編視聴の際には是非とも注目してみてください。
クリック型ミステリーADV、シロナガス島への帰還の感想
お絵かき練習ブログにすると言ったな。あれは嘘だ。
ブログの紹介文をしれっと修正したから問題ない。
――ということで、今日は冬コミで新作として発表されたミステリーADV、『シロナガス島への帰還』の感想を書きたいと思います。
お絵かきオンリーだとネタが無いから。
ゲーム序盤のネタバレがあるので、まっさらな状態でプレイしたい方は読まないようお願いします。
作者紹介(主観)
シロナガス島への帰還は旅の道(旅の道第三停留所)というサークル制作のクリック式アドベンチャーゲームになります。
旅の道の中の人、鬼虫兵庫さんは今作がゲーム初作品ですが(*1)、普段は小説サークルとして長く活動している方です。
ゲーム畑の人でも同人誌や攻略本、副読本の類を作ろうとした人なら名前を知っているかもしれません。
なんとこの方、過去に市販の文庫本そっくりの同人誌を自分で製本しています。
tabinomichi.com↑これです。プリンターと凄まじい気合いがあれば市販品そっくりな本が作れるという画期的かつ衝撃的な記事でした。
この凄まじい気合いで完成させた同人誌だけでも、自身の作品や創作に対するこだわりがひしひしと伝わってきますね。
このこだわりっぷりはシロナガス島への帰還のパッケージにも反映されていて、
商業ゲームと並べても遜色ない洗練されたパッケージデザインと
中にはゲームの内容を紹介する4ページの漫画が入っています。
こういうこだわりって自作品に対する愛情みたいなものが感じられて良いですよね。
更に鬼虫兵庫さんはかなりのADVゲーム好きのようで、ブログでは時折ADVゲームの話をされています。
中でも面白かったのがルートレター関連の記事なんですが、発売前のイベントに行ったり限定版を買ったりとルートレター愛がマックスです。
ルートレターはあまり良い出来とは言えなかったようですが、システムに対する言及などから鬼虫兵庫さんがADVに対する造詣が深いことがうかがえます。
あと、純粋にブログの文章が面白いという。
そんな作者さんが作ったゲームはどんなゲームなのか。
早速内容についても紹介していきたいと思います。
プロローグ
物語は主人公の探偵・池田戦が空港で誰かを待っている所から始まります。
このゲームは所々自分で画面をクリックして進める場面があるのですが、ここでも空港内をクリックし待ち合わせの人物を探します。
クリックできる場所が色々あって、実際に空港にいるような気分が味わえます。
しかし、どこを見てもそれらしき人物は見当たりません。
そこでふと、空港内の電光掲示板を見てみると……
掲示板の文字が乱れ、何とも不穏な言葉に変わりました。
これが何を意味するのか現時点ではわかりませんが、何とも不気味なメッセージです。
しかし、メッセージが表示されたのはほんの一瞬。
すぐに元の離発着案内に戻ります。
そして、掲示板から空港内へ視線を戻すと、先程まではいなかったセーラー服の少女と警備員らしき人の姿が。
このゲームのヒロインである出雲崎ねね子の登場です。
彼女は二十数ヵ国語をネイティブに話せる天才らしいのですが、極度の人見知りで初対面の相手とはまともに会話できないようです。
迷子のねね子に空港の職員が色々と尋ねていますが、ねね子は「ああ…」とか「うう…」と言葉を返せず涙目になっています。
そこで空港職員に事情を話し、ねね子と合流しました。
ちなみに、ここはジョン・F・ケネディ国際空港といって、なんとニューヨークにあります。
ねね子ははるばる日本から、池田を訪ねてアメリカまでやって来たのでした。
しかし再会にホッとしたのもつかの間。
すぐに、池田の携帯が鳴ります。
電話の相手はエイダ・ヒギンズという女性のようです。
ひどく狼狽えていて、何か大変なことが起こったらしいのですが、電話口では話せないという彼女の屋敷まで出向くことに。
もちろん、ねね子も同行します。
池田は元々エイダから父親の素行調査を依頼されていたのですが、その父親が自殺。
自殺の原因を探して欲しいと改めて依頼されます。
――と、ここにきてねね子のすごい特技が判明します。
なんとねね子は一度見たものは一生忘れない完全記憶の持ち主でした。
自殺前に撮られていた書斎の写真と現在の書斎を見比べて、本棚の本が動いていることを看破します。
本には遺言状が隠されていました。
内容は抽象的過ぎてよくわかりませんが、何か恐ろしいことが起こったことを伺えます。
そして、本には遺言状の他にもう一つ、別の手紙が隠されていました。
その内容から池田は父親の自殺の原因がこの手紙にあると判断。
自殺の原因を探るべく池田とねね子はシロナガス島へ向かうことに……。
――と、ここまでが序盤の物語になります。
ここまでに3回ほどクリックで調べて進める場面がありますが、どれも適度な難易度で没入感を阻害されることなく進める出来ました。
クリアした感想
まず一言いいたいのは、『没入感が素晴らしかった』という事です。
クリックで調べるパートの頻度や組み込み方も良かったのですが、作者さんが小説書きなだけあって文章そのものがとても良かったです。
特に好きなのが冒頭の空港とシロナガス島へ向かう船のシーンで、どちらも情緒たっぷりでちょっとした旅行気分が味わえます。
また、主人公の探偵・池田もいい味出してました。
アメリカの探偵はライセンス制であり幅広い知識と教養が必要なようで、池田視点の地の文は様々な知的好奇心を満たしてくれます。
読んでいると自分の知らない知識や考え方を沢山見ることが出来て面白いです。
あと、他の人達も言っていますがねね子が可愛いかったです。
一人称僕っ子の超絶コミュ障ビビりで天才的頭脳と完全記憶の持ち主、と書くとどんな設定増し増しヒロインだ! となるのですがゲーム内では不思議とマッチしていてむしろどれが欠けていても駄目だ! となります。
こればっかりはプレイした人にしか伝わらないと思いますが……池田はねね子だから出来る事に何度も助けられる事になります。
特にDEAD ENDでは怖がりなねね子が池田の為に起こした行動が凄いです。
あれを見るとなんとしてでも無事に島を出るんだ! という気になります。
最後に
このゲームは随所に伏線が散りばめられていて、序盤以降の内容に触れると何かしらのネタバレになってしまうのですが、とにかく作り込まれていて面白いゲームでした。
最初は普通のミステリーみたいな雰囲気なのですが途中からホラーチックになり、更にとんでもない謎が判明し、色々と大変な目にあいながらもクリア後は大きな達成感と共に前向きな気持ちになれます。
半日あればクリアできるボリュームなので、ミステリーや昔のADVが好きな人には是非おすすめしたいゲームです。
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*1補足
作者紹介で『鬼虫兵庫さんは今作がゲーム初作品ですが』と書きましたが実は、シロナガス島への帰還以前にもゲームを公開されています。
それがこの、『旅の道~7th CASE~』です。
主人公はなんと池田!
シロナガス島への帰還をクリアしてもっと池田の活躍を見たいと思った人におすすめの1作です。
なお、未完成らしく反応が沢山あったら頑張って完成させるとのこと。
というわけで、皆でDLして応援しましょう!